作事庵について
山のこと
木造建築には品質のよい木材が欠かせない中で、木材を継続して使用するためには、山の手入れ、適正価格での取引、適度な使用量が大切になります。
古くからの木造建築は、現代のそれに比べて木材使用量が、1.5〜2倍くらい多いと思います。それだけの差がついたのは、内装と外装とも木に代わる材料が出てきたこと、木材を選定して使用する側の工法や意識(価値観)の変化も大きな要因です。
大壁を見ると、築80年ほどの住宅でも真壁だけではなく、木ずり壁や板壁などの大壁もあります。しかし、石膏ボードなどの使用により工法が変化したことで、仕上げ材も変化し、下地材や構造材の品質や使用量にも影響が出ました。
製品市場で産地や品質を気にせず、安いだけで仕入れたり、単純に「木が見えていればいい」というような価値観では品質の高い材料は求められないのです。
西川材との関わり
日本全国には地域地域で素晴らしい材料があり、産地によって同じヒノキでも仕上げたときの表情が全然違います。私も修行時代から、スギでは北山杉や秋田杉、吉野杉や屋久杉、ヒノキでは尾州(木曽)桧や吉野桧、尾鷲や東農桧、ヒバでは青森ヒバや能登ヒバなどを使用してきました。
その中でも西川材は、スギ、ヒノキとも油があり、カンナで仕上げたときの艶は素晴らしいものがあります。この艶は、他の産地と比べても類を見ない木材でしょう。
西川材は、その表情のよさと構造材としての評価から、大規模な木造建築や社寺建築にも選ばれて使われてきたという実績があります。
土のこと
玄関土間の三和土(たたき)や、土壁の荒壁から中塗り仕上げ、古くは釜土まで。土には様々な用途があります。土の種類も、土壁に仕様する荒木田土のような粘土性の強いものから、漆喰に混ぜて色壁をつくれる黄土や赤土まで様々です。
土壁は荒木田土に稲藁と水を混ぜて、半年ほど寝かせてから荒壁に使います。半年ほど寝かせ、土を発酵状態にすることで土と葉がしっかり混ざり、壁としての強度が出るとともに耐水性も高くなります。
梅雨から夏場の湿気が多い時期に、土壁が湿気を吸って調湿してくれる特徴があり、作事庵では土壁をおすすめしています。
肝心なところはプロの左官屋さんに任せて、ご家族で土壁塗りをすることもできます。